「つとめる」を漢字で書こうとすると、「勤める」「務める」「努める」のどれを選べばよいのか迷うことがあります。特に仕事に関する文章では、「勤める」と「務める」がどちらも合いそうに見えることがあります。
現代の一般的な使い分けでは、勤務する意味なら「勤める」、役目・任務を果たす意味なら「務める」、目的に向かって努力する意味なら「努める」が基本です。
大切なのは、「仕事に関係するから勤める」のように単純に決めるのではなく、文章中の「つとめる」が何を意味しているのかを確認することです。この記事では、3語の基本的な違いから、自分の文章での判断方法、助詞の見方、決めにくい場合の確認方法まで整理します。
勤める・務める・努めるの違い
「勤める」「務める」「努める」は、いずれも「つとめる」と読みますが、現代の一般的な文章では意味によって書き分けるのが基本です。
| 表記 | 中心となる意味 | 判断するときの言い換え | 使い分けの目安 |
|---|---|---|---|
| 勤める | 職場などで仕事をする | 勤務する | 勤務先・所属について述べる |
| 務める | 役目・任務を果たす | 役目を果たす・任務を担う | 役職・役割・任務について述べる |
| 努める | 目的に向かって力を尽くす | 努力する・力を尽くす | 改善や達成などへの努力を述べる |
最初に確認したいのは、文中の「つとめる」が「勤務」「役目・任務」「努力」のどれを表しているかです。この意味の違いを押さえると、3語をかなり判断しやすくなります。
「勤める」は勤務する意味が基本
「勤める」は、職場や組織などで仕事をするという「勤務」の意味で使うのが基本です。
たとえば「会社に勤める」という場合は、その会社を勤務先として働いていることを表します。「勤務する」と言い換えて意味が大きく変わらないかを見ると、判断しやすくなります。
一方、「勤める」には勤務とは別に、仏事や勤行を行う意味もあります。そのため、「勤めるは会社や職場で働くときだけに使う」とまで限定するのは適切ではありません。
「務める」は役目・任務を果たす意味が基本
「務める」は、ある役目や任務を引き受け、それを果たす意味で使うのが基本です。
たとえば「司会を務める」という場合は、どこかに勤務していることではなく、「司会」という役割を担当することを表しています。「役目を果たす」「任務を担う」と言い換えられるかが一つの判断材料になります。
仕事に関する文章でも、会社への所属を述べるのか、その中で担当している役職や役割を述べるのかによって、「勤める」と「務める」は分かれます。
「努める」は努力する意味が基本
「努める」は、ある目的に向かって力を尽くす、努力するという意味で使うのが基本です。
「改善に努める」であれば、「改善するために努力する」という意味になります。役職や担当を表す「務める」とは、何かの役目を担っているのか、それとも目的のため努力しているのかを見ると区別しやすくなります。
なお、「勉める」という表記も辞書にはありますが、「勉」の「つとめる」は現在の常用漢字表に掲げられている訓ではありません。この記事では、一般的な文章で迷いやすい「勤める・務める・努める」の3語を中心に扱います。
自分の文章ではどの「つとめる」を使うか判断する

3語の意味を覚えるだけでなく、自分の文章に当てはめられることが大切です。判断するときは、次の順序で確認すると整理しやすくなります。
- 文中の「つとめる」が何を意味しているか確認する
- 勤務先で働くことなら「勤める」を検討する
- 役目・任務を担うことなら「務める」を検討する
- 目的に向かって努力することなら「努める」を検討する
- 迷ったら言い換えて意味を確認する
「勤務する」「役目を果たす」「努力する」のどれに近いかを考えます。 - 助詞を補助的に確認する
典型的な文型は手掛かりになりますが、助詞だけでは決めません。 - それでも決めにくい場合は用字基準などを確認する
特定の文書に表記ルールがある場合は、その基準も確認します。
仕事の話でも「勤務先」か「役割」かで分ける
「勤める」と「務める」で迷いやすいのは、どちらも仕事に関係する場面で使われることがあるためです。
この場合は、「仕事の話かどうか」ではなく、勤務先について述べているのか、役割について述べているのかを確認します。
「会社に勤める」は、その会社で勤務していることを表します。一方、「責任者を務める」は、責任者という役割を担当していることを表します。
つまり、同じ人物について書く文章でも、「どこで働いているか」を示す部分と「どの役割を担っているか」を示す部分では、使う漢字が変わり得ます。
「務める」と「努める」は役割か努力かで分ける
「務める」と「努める」は、どちらも何かに取り組んでいるように見えるため、意味を曖昧にすると迷いやすくなります。
区別するときは、「役目そのものを担当しているのか」「目的のために力を尽くしているのか」を確認します。
- 役目・役割・任務を担っている → 「務める」を検討する
- 改善や達成などに向けて努力している → 「努める」を検討する
「役目を果たす」と言い換えやすければ「務める」、「努力する」と言い換えやすければ「努める」という考え方が判断の助けになります。
ただし、辞書に収録される語義には幅があるため、「務めるには努力に近い意味が絶対にない」とまで断定する必要はありません。表記を選ぶ際は、現代の一般的な書き分けとして、役目・任務と努力を区別して考えるのが分かりやすい方法です。
言い換えを先に確認し、助詞は補助として使う
「つとめる」の漢字を選ぶときは、助詞だけを見るより、まず文全体の意味を言い換えて確認する方が判断しやすくなります。
判断するときは、次のような言い換えを使えます。
- 「勤務する」に近い → 「勤める」を検討する
- 「役目を果たす」「任務を担う」に近い → 「務める」を検討する
- 「努力する」「力を尽くす」に近い → 「努める」を検討する
助詞も手掛かりにはなります。典型的な文型では、「勤務先に勤める」「役割を務める」「目的や取り組みに努める」といった形があります。
しかし、「に」は「勤める」と「努める」のどちらでも現れるため、「にが付くから勤める」のようには決められません。また、「を」があれば必ず「務める」とするのも適切ではありません。
そのため、意味を確認する → 言い換えて確認する → 助詞を補助的に見るという順序で考えるのが実用的です。
どの漢字か決められないときの確認方法
意味・言い換え・助詞を確認しても判断しにくい場合は、無理に一つの漢字へ当てはめず、文章の目的や適用される表記基準も確認します。
用字基準がある文書はその基準を確認する
文化庁の「『異字同訓』の漢字の使い分け例」は、現代の書き分けを考える有力な参考になりますが、異なる使い分けをすべて否定する絶対的な規則ではありません。年代や分野などによって表記の習慣が異なる場合があることも示されています。
また、公用文には文化庁の「公用文作成の考え方」があり、異字同訓の漢字について使い分け例を参考にする方針が示されています。ただし、これは公用文についての方針であり、一般の文章すべてにそのまま当てはめる絶対ルールではありません。
会社・学校・媒体などで独自の用字基準が適用される文書では、一般的な使い分けだけで決めず、その文書に適用される基準も確認します。
判断しにくい場合は仮名書きも選択肢になる
漢字の使い分けが判断しにくい場合、文書のルールに反しない範囲で「つとめる」と仮名で書く方法も選択肢になります。
文化庁の異字同訓に関する資料でも、必要に応じた仮名書きは妨げないとされています。
ただし、「迷ったら必ずひらがなにすればよい」という意味ではありません。一般的な使い分けで判断できるなら漢字を選び、特定の用字基準がある文書ではその基準を確認したうえで、必要に応じて仮名書きを検討します。
勤める・務める・努めるの使い分けまとめ
「勤める・務める・努める」で迷ったときは、漢字そのものから考えるより、文中で「つとめる」が何を意味しているかを見ると整理しやすくなります。
- 勤務する意味 → 「勤める」
- 役目・任務を果たす意味 → 「務める」
- 目的に向かって努力する意味 → 「努める」
仕事に関する文章でも、「勤務先」について書くのか「役割」について書くのかで表記は分かれます。迷ったときは「勤務する」「役目を果たす」「努力する」のどれに近いかを確認し、助詞は補助的な手掛かりとして使います。
それでも決めにくい場合や、正式な文書で表記基準が決まっている場合は、その基準を確認してから表記を選ぶとよいでしょう。


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