「相殺」という字を見て、「そうさい」と「そうさつ」のどちらで読むのか迷うことがあります。「殺」は「さつ」と読む印象が強いため、「そうさい」で本当によいのか気になる人もいるでしょう。
差し引く・帳消しにする・互いの作用を打ち消すという一般的な意味の「相殺」は、「そうさい」と読むのが基本です。ただし、「そうさつ」という読み自体も辞書に載っているため、すべての場面で「そうさつは存在しない読み」と考えるのは適切ではありません。
ポイントは、読みだけを二択で決めるのではなく、「相殺」がどの意味で使われているかを見ることです。この記事では、「そうさい」と「そうさつ」の違い、なぜ「殺」を「さい」と読むのか、辞書で両方の読みを見つけたときの確認方法まで整理します。
相殺の読み方は「そうさい」が基本
差し引き・帳消し・打ち消しの意味なら「そうさい」
一般的に「相殺」と聞いて思い浮かべる、金額や損得を差し引く、あるいは互いの効果を打ち消すという意味では、「そうさい」と読みます。
文化庁の常用漢字表の音訓索引では、「殺」に「サイ」という音が示され、その用例として「相殺」が挙げられています。漢字ペディアでも「相殺」は「ソウサイ」とされており、一般的な読みを確認する根拠になります。
たとえば、「損失と利益を相殺する」のように差し引いて帳消しにする場合や、「長所と短所が相殺される」のように互いの作用が打ち消される場合は、「そうさい」と考えればよい場面です。
公的な専門用語でも、「そうさい」という読みは確認できます。たとえば税関の用語集では「相殺関税」を「そうさいかんぜい」としています。日常的な文章だけでなく、専門用語の中でも「相殺」を「そうさい」と読む例があることが分かります。
法律や会計でも「相殺」という語は使われますが、この記事で扱うのは読み方までです。個別の契約で相殺できるか、会計処理として相殺してよいかといった判断は別の専門的な論点になります。
「そうさつ」という読み自体も存在する
一方で、「そうさつ」という読みを「日本語には存在しない」と言い切ることもできません。確認済みの国語辞典には、「相殺」を「そうさつ」と読む項目もあります。
その代表的な意味が「互いに殺し合うこと」です。この場合は「殺」を「さつ」と読むため、「相殺」は「そうさつ」となります。
さらに、辞書によっては「そうさつ」の項目から「そうさい」へ参照させる形や、差し引きの意味に対応する用法も収録されています。このため、「そうさつ」という読みが辞書にあることと、一般的な差し引きの意味では「そうさい」を基本とすることは両立します。
ここで区別したいのは、「そうさつという読みが辞書に載っているか」と「差し引きの意味の相殺を普段どう読むか」という2つの論点です。前者だけを見て「どちらでも同じ」と考えると、文脈に合った読みを選びにくくなります。
「そうさつは絶対に間違い」と一律に覚えるのではなく、通常の差し引きなら「そうさい」と覚える方が正確です。
「そうさい」と「そうさつ」は意味で読み分ける

2つの読みで迷ったときは、漢字だけを見るのではなく、前後の文脈から「相殺」が何を意味しているか確認します。判断の中心になるのは、差し引き・帳消し・打ち消しなのか、それとも「互いに殺し合う」という意味なのかです。
| 読み | 主な意味 | 基本的な扱い |
|---|---|---|
| そうさい | 差し引く、帳消しにする、互いの作用を打ち消す | 一般的な「相殺」ではこちらを基本にする |
| そうさつ | 互いに殺し合う | この意味では成立する。辞書によっては「そうさい」への参照もある |
表のとおり、2つは同じ「相殺」という表記を使いますが、中心となる意味が異なります。そのため、読みだけを暗記するより、「この文では何を相殺しているのか」を先に確認する方が、実際の文章では判断しやすくなります。
「そうさい」は差し引き・帳消し・打ち消しの意味
「そうさい」と読む場合は、「殺」が「へらす」側の意味で使われています。金額や損得を差し引く場合だけでなく、互いの長所や効果などが打ち消される場合にも使われます。
そのため、自分が見ている文で「相殺」が何かを減らす、差し引く、打ち消す意味になっているなら、「そうさい」と判断できます。
迷ったときは、まず「何と何が相殺されているのか」を見ると判断しやすくなります。たとえば金額同士を差し引いている、損失と利益を差し引いている、二つの作用が互いに打ち消し合っている、と読み取れるなら、「そうさい」の意味に当てはめられます。
「そうさつ」は互いに殺し合う意味
「そうさつ」は、国語辞典で「互いに殺し合うこと」という意味が確認されています。差し引きや帳消しとは意味が異なるため、同じ「相殺」という表記でも文脈を分けて考える必要があります。
ただし、辞書には「そうさつ」から「そうさい」への参照や対応する用法が載る場合もあります。そのため、「そうさい」と「そうさつ」を完全に切り離し、「片方だけが常に正しい」と単純化しないことが大切です。
なぜ「殺」を「さい」と読むのか

「相殺」を「そうさい」と読むことに違和感があるのは、「殺=さつ」という読みが身近だからでしょう。しかし、「殺」には「サイ」という音もあります。
文化庁の常用漢字表の音訓索引では「殺」の「サイ」が確認でき、「相殺」がその用例として示されています。また、漢字ペディアでは「サイ」に「そぐ・けずる・へらす」という意味が示されています。
つまり、相殺の「殺」は「ころす」という意味ではなく、「へらす」側の意味に対応する「サイ」と考えると理解しやすくなります。
ただし、「殺」を含む熟語がすべて「サイ」と読めるわけではありません。ここでは、「相殺」で「サイ」という音が使われる理由を理解するための情報として押さえておけば十分です。
辞書に両方の読みがあるときは意味まで確認する
辞書で「そうさい」と「そうさつ」の両方を見つけると、「結局どちらでもよいのでは」と迷うかもしれません。しかし、辞書に両方の見出しがあることと、どの場面でも同じように使えることは別です。
確認するときは、読みだけではなく、それぞれの項目に書かれている意味まで見ます。「そうさい」が差し引き・帳消し・打ち消しを表し、「そうさつ」が殺し合う意味を表しているなら、自分が読もうとしている文の意味と照らし合わせて判断できます。
また、辞書によっては「そうさつ」の項目から「そうさい」へ参照させるなど、見出しの作り方が異なります。一つの辞書の一行だけを見て、「そうさつは絶対に誤り」「両方まったく同じ」と決めつけない方が安全です。
大修館書店の旧Q&Aでは、差し引きの意味の「相殺」は「ソウサイ」とし、通常の「ソウサツ」は誤りと説明しています。ただし、そのページ自体が2008年以前の記事であると明記されています。現在確認できる国語辞典には「そうさつ」の見出しや「そうさい」への参照もあるため、この記事では古い資料一つだけで全面的な正誤を決めず、複数資料を合わせて「通常の差し引きならそうさい」と整理します。
判断に迷うときは、信頼できる国語辞典で「そうさい」と「そうさつ」の意味欄を確認し、漢字そのものの音を確かめたい場合は常用漢字表や漢字辞典を見ると整理しやすくなります。
通常の差し引き・帳消し・打ち消しの意味なら「そうさい」、別義として「互いに殺し合う」を表すなら「そうさつ」と、まずは意味を確認してから読むことが判断のポイントです。

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